老後の家賃2000万円問題
たとえば、65歳で引退、90歳まで暮らすと仮定し、月6万円のシンプルな部屋に住むとします。65歳で用意すべき家賃総額はなんと1800万円です。ここには更新料や家賃保証料などは含まれていませんので、2000万円程度は考えておいたほうがいいでしょう。「老後の家賃2000万円問題」というわけです。
数字が「老後2000万円」とほぼ同じですが、これは年金で足りない教養娯楽費、交際費のためのものですから、別ものです。つまり、「老後に2000万円」+「老後の家賃2000万円」を確保してリタイアしないといけないことになります。
65歳から家賃月6万円で90歳まで賃貸住宅に住むと、25年間で1800万円以上かかり、これは「老後資金2000万円必要」とは別に用意しなければならない、という主張ですが、これには少し間違いがあります。
「老後資金2000万円必要」の根拠となる数字には、「住居費」が含まれているからです。
その基となった統計の数字には、持ち家の人もいれば賃貸の人もいてその平均ですからね。
高齢夫婦無職世帯で言うと、消費支出約24万円の5.7%(=約13600円)が「住居費」で、賃貸住宅の家賃や持ち家の修繕費が入っていると考えられます。
月13600円を25年間払うと約400万円ですから、賃貸の人が住宅費としての確保すべき差分は1600万円になりますかね。
さらに持ち家には固定資産税がかかります。おそらくこれは非消費支出に入っているので、さらにこの差分は小さくなるかも。
公的な「家賃手当」はないが、公的住宅はある
また「公的年金には家賃手当も住宅手当もない」のは事実ですが、公的住宅を現物で提供する政策はあります。
市町村によりますが、収入が少ない人にはさらに安く貸してくれる仕組みもあります。
本当に困窮した場合には、生活保護のうちの「住宅扶助」だけを受けることもできないわけではありません。(面倒だろうけど)
持ち家がなければ老後の生活費が圧迫される覚悟は必要
老後2000万円+1600万円という数字を絶対的なものと考える必要はありませんが、持ち家がなければ家賃によって老後の生活費が圧迫される覚悟は持っておくべきでしょう。
私がセミリタイアに踏み切れた理由の一つには、老後に住める実家があることが挙げられます。
高齢無職単身世帯の収支では、消費支出約14万円のうち、平均で9.2%(=12900円)が「住居費」になっているわけで、夫婦世帯と比べて比率は大きくなっています。
かと言って持ち家を買えば安心かと言うと、老後25年住むなら元々古い物件では修繕費が負担になったり、マンションでは建て替えが必要になるケースもあるでしょう。
田舎の物件では、その地域が限界集落になってしまうリスクもあります。
90歳になる前に、施設に入らなければならなくなるかもしれませんし、先のことは読みきれません。
持ち家を買えば安心、とは言い切れないのが難しいところですねぇ…