「自然実験」の確率でノーベル賞
2021年のノーベル経済学賞は、デビッド・カード、ヨシュア・アングリスト、グイド・インベンスの3名が受賞した。特にカードは、「労働者の最低賃金を引き上げた場合に、負担が増した企業は雇用を減らすはずだとされていた常識が必ずしも正しくないことを自然実験の手法を用いて実証」したことが評価されたと報道されている(NHK「ノーベル経済学賞に米大学の研究者3人」)。
「デビットカード」と「デビッドカード」が混在した記事を書いてしまう元銀行員をネタにした記事を先日書いたばかりです。
そこにきてデビッド・カード氏がノーベル賞受賞とは…
今は「デビッド・カード」でぐぐっても「デビット・カード も含めた検索結果を表示しています」になってしまいますが、ちゃんとデビッド・カード氏の研究やその実績について検索結果が出るようになって欲しいですね。
「最低賃金を上げたら雇用が減るぞ!」
最低賃金の引き上げ議論では、必ずと言って「雇用が減る」という反論が出て紛糾します。
今回ノーベル経済学賞を受賞した社会に起きた変化の前後などを比較する「自然実験」と呼ばれる手法により、デビッド・カード氏はアメリカでは雇用は減らないことを実証しています。
アメリカでは賃金のコスト増は価格に転嫁されたとのことで、価格を上げにくい日本では全く同じと言えません。韓国のように急激に上げすぎると悪影響が大きいのも間違いない。
ただ単純に最低賃金の引き上げによって雇用が減るだけでないとは言えるでしょう。
中長期的には自動化する方がコストが安くなり、減っていく部分もあるはずですが、その自動化のために生まれる雇用もあるのでトータルでみないとわかりません。
日本でも「自然実験」で検証すべきだが
日本では10月1日から最低賃金が引き上げられ、全国加重平均が930円になりました。
この前と後を比較する「自然実験」で、雇用がどのように変化したのか検証すべきだと思いますが、コロナ禍で倒産する企業や閉店する店も多いので難しいかもしれません。
最低賃金に限らず、施策の前と後を比較して評価する手法をもっと取り入れたらいいと思います。