日本人が知らない「年金」の真実
定年前後のマネーの達人、大江英樹・加代夫妻は、「多くの日本人が感じている老後のお金にまつわる不安は、実態のない幽霊のようなもの」と語る。老後2000万円問題の真実から、年金破綻の“大嘘”までを解き明かすーー。
タイトルの「年金が10倍以上に増えている」が目を引きますが、これは「1970年に比べて年金額は10倍以上」というもの。
老齢基礎年金(国民年金)の満額で言えば、1969年に改定されて60,000円から96,000円になっています。
その後、1973年には240,000円になり、1976年には390,000円へと増えているので、「狂乱物価」と言われた当時のインフレの凄まじさを感じます。
「1976年と比べれば基礎年金額は2倍」もまた真実なので、「10倍以上」だけを見るのは危険です。
支払う保険料は1970年に比べて30倍以上!
では逆に支払う保険料の方はどうかというと、1970年当時の国民年金保険料はなんと1ヶ月450円。
現在は16,590円ですから、36倍になります。1974年には倍の900円になり、1976年には3倍の1400円になっていて、今の12分の1程度。
これは年金は生活がかかっているから早くインフレに対応しないといけないけれど、保険料の方は段階的に上げないといけないため。
結論として言いたいのは、狂乱物価(1972~1974年)の前の数字と今を比較すると極端な数字になってしまうので、できれば狂乱物価の後ぐらいからにした方がいいということ。
マクロ経済スライドで年金は破綻はしにくい
また昔と違うのは今の年金支給額は「物価スライド」だけでなく「マクロ経済スライド」でも変化します。
平成16年の年金制度改正で導入されたマクロ経済スライドにより、持続性が高くなり破綻しにくくなっています。
だから「年金破綻」はそうそう起きない。物価上昇に追いつかず、目減りするのは覚悟しなければなりませんが。
逆に言うと、現役世代の賃金の上昇はマクロ経済スライドによって年金支給額でプラスに働くため、年金受給世代によっても悪い話ではありません。
今後、万が一にでも狂乱物価のように物価上昇が続いたら大変ですけどね…