「老後2000万円問題」の落とし穴
老後資金は本当に2000万円が必要なのか。民間信用調査会社・帝国データバンク情報統括部の著書『帝国データバンクの経済に強くなる「数字」の読み方』(三笠書房)から、「老後2000万円問題」の落とし穴を紹介する――。
「老後2000万円問題」を煽らず、冷静に語るフィナンシャルプランナーや経済評論家は一部に限られますが、こちらの記事は誰が書いたのかと思ったら帝国データバンク情報統括部(が書いた書籍から)でした。
不安を煽るのに便利に使われている数字の読み方の材料として、書籍の中で取り上げているのですね。
「老後2000万円問題」の基となった家計調査の結果は毎年変わっていて、コロナ禍の特殊な状況では「老後55万円問題」まで縮小するなどしています。
それを冷静に見て判断すべきなのに、2017年のデータから導かれた「老後2000万円問題」をずっと言い続けるのはおかしな話なのは、私もこれまで言ってきた通り。
「不足」という意味合いはないのか?
記事に書かれていることは激しく同意するのですが、ただ1点気になることがありました。
議論の問題点の2つめに「平均収入と平均支出の差額には『不足』という意味合いはない」としている点です。
これは家計調査の結果において「不足分」とはっきり書かれているので、「不足」という意味合いになるのはしょうがないかと。
実際には、不足してやむなく貯金を取り崩している人もいれば、貯蓄に余裕のある高齢世帯が年金収入よりも多めに支出しているケースもあるでしょう。
単純な「不足」ではないとは思いますが、家計調査でこう書かれている以上、「不足」という認識になるのも致し方ないですね。
金融庁がアップデートしないのが問題
家計調査において総務省が「不足」と言っているのは問題だし、それ以上に金融庁が「老後2000万円問題」をぶち上げてからアップデートしていないのが問題です。
やはり政府が言うことは説得力があるし、アップデートしない以上は「老後2000万円問題」が公式見解のままですからねぇ。
単に数字が一人歩きしているというよりも、数字を一人歩きさせているという印象です。
金融庁としては新NISAで広がっている貯蓄から投資への流れを止めたくないんでしょうけどね。