「老後2000万円問題」は家計調査の数字から
「老後資金2000万円必要」というのは、2017年の家計調査において、高齢無職夫婦世帯の毎月の不足分が5万円を超えていることから導かれたものです。
調査対象が変わったり、社会環境で不足額は毎年変わるので、2000万円だけが独り歩きするのはどうかという声はありました。
しかしながら、夫婦世帯でも単身世帯でも、一定の不足額(=貯金からの取り崩し)があるというのは共通認識になっていました。
その不足額は平均にすぎず、自分の生活はまた違うわけですが、「人並みの生活」を求める人には目安となる数字です。
全国家計構造調査では黒字?
ところが、5年に1度実施する「全国家計構造調査(2019年)」の結果を見ていたところ、家計調査と似ていながら大きな違いを発見しました。
簡単に言うと、「不足額がなく黒字がある」ということ。
こちらは男女別になった高齢無職単身世帯の収支ですが、女性は不足分があるものの男性はなくて黒字になっています。
ちなみに、同じ年の家計収支のデータがこちら。
支出額はほぼ同じながら、社会保障給付の金額で差がありますね。
女性は年金が少ない人が多いし、男性よりも長生きすることを考えれば備えが必要でしょう。
高齢夫婦世帯は年齢とともに支出が減少して黒字化
一方、夫婦のみの世帯(世帯主が65歳以上,有業者のいない世帯)の年間収入及び消費支出の年齢階層別データでは、年齢とともに黒字化しているのがわかります。
65~69際は消費支出が27万円超で、これに税金や社会保険料を加えるとおそらく30万円を超えるため年間収入を超えてわずかですが赤字になってそう。
しかし75歳以上になると支出が22万円にまで減っており、収入はあまり減らず月30万円くらいあるため黒字化しているはず。
元気なうちは旅行に行ったりして使うけれど、歳を取って動けなくなるとどんどん使わなくなるものですからね。
この調査の夫婦のみの高齢世帯の収入が多すぎる気はしますが…
支出の減り方を見るに、先のことが心配だからと我慢しすぎるよりは、元気に動けるうちに楽しんでおいたほうがいいんだろうな、と思ってしまいました。