年金返せデモ
今の高齢者の支出の平均値を使っているなど、今回の金融庁の報告書のいい加減さや、その後の政府の対応についてのまずさについて怒るのはよくわかります。
その一方で、このデモを主催した人や参加した人はどれだけ年金の仕組みについてわかっているのだろう、と疑問になります。
「公的年金収入だけでは毎月5万円赤字」は現在の高齢無職世帯(2人)の家計収支の平均から導き出された数字です。
「将来的に国民に自助を求める報告書案」というレッテル貼りは意味がわからない。
今の高齢者は貯金を取り崩す自助で生活しているというデータなんです。ただし、苦しいかどうかは別であって、自助で優雅に楽しんでいるという見方もできます。
この報告書の問題は、中央値ではなく平均値を使っているなど「データの捉え方」の問題です。
年金だけで暮らすのが理想ではあるけど…
金融庁の報告書を巡って、東京で「年金払えデモ」が行われ、主催者発表で2000人が集まったという。
— KAZUYA (@kazuyahkd2) June 17, 2019
「普通に暮らせる年金払え」と書かれたプラカードを掲げているけど、この人達は年金を曲解していないだろうか?
香港のデモと比べると残念な気持ちになってくるな…。
「毎月5万円赤字」だから、「普通に暮らせる年金が払われていない」とデモをしている人はお怒りなのでしょうか。
2013年の家計収支のデータで、高齢無職世帯(2人)の年金収入は21万5千円、可処分所得で18万5千円です。
この金額を知って言っているのだとすれば、その「普通」ってなんやねんとなりますが。
「国民年金だけでは生活できない」(だから年金制度は要らない)と言う人と同じですかねぇ。
厚生年金の2階部分である老齢厚生年金は、現役時代に支払った厚生年金保険料の金額(報酬に比例)次第なので、年収が高い人なら「普通に暮らせる年金」がもらえるはずですし。
老齢厚生年金が報酬比例の仕組みになっていることすら知らないんじゃないか、と疑いを持ってしまいます。
複雑ゆえの誤解が政権を揺るがす
ただし、こういう誤解を生んでいるのも今の年金制度が複雑で、現状に合っていない制度のまま続けていることが原因なので、政府は自業自得です。
年金に対する不安感・不信感はずっと燻っていたところに、油を注いだだけに過ぎません。
これをきっかけに、年金制度をわかりやすいものにしてくれればいいと思うのですが、そうはならないでしょうねぇ。
厚生労働省の人たちは金融庁に対して怒っていて、省庁間の軋轢を生んだだけで終わりそうな気がします。