人間は「何もしない」を苦痛に感じる
だがこれまで行動し、更新し、拡大成長することに全リソースを注ぎ込んできた現代文明だ。「する」が是である価値観において、「しない」は等価な選択ではなく、ゼロや欠如であるとネガティブに認識される。パンデミックが炙り出したのは、「しない」に対する、人々の偏執的とも呼べる拒絶だった。
確かに、「何もしない」ことを強制されると、人は苦痛に感じます。
実際、仕事を与えないことは、パワハラに該当すると労災が認められた事例があるくらいです。
さらに、自分が立てた目標に向かって前進することに重きを置いている人にとって、前進を止められることは生きがいを失った状態かもしれません。
政府は「何もするな」とは言ってない
でも、政府が言ったのは「外出自粛」や「3密注意」であって、「何もするな」とは言っていません。
世界的な合言葉となったのは「STAY HOME(おうちにいよう)」であって、家の中で好きなことをすればいいのです。
本を読んだり勉強してもいいので、それは自分の成長に繋がります。
ただ一心不乱に前に突き進んだ人は、一度立ち止まって考えるチャンスだと捉えることもできます。
家にいる長い時間をいかに有効に使うかを問われているだけではないでしょうか。
リタイア生活は暇との戦い
定年退職をした人は、リタイア後にどうすればいいのかを悩む人は一定数います。現役時代は仕事の虫で、趣味を持ってなかったという人などですね。
趣味を持っていても、お金がかかる趣味だと毎日できなかったり、リタイア後は我慢が多くなったり。
さらに、今回の新型コロナによる外出自粛の間は、その趣味が楽しめなくなった人もいると思います。
趣味を複数、インドアとアウトドア両方持っていれば、インドアの方だけでも楽しむことができますが、唯一の趣味が楽しめなくなった人はつらいでしょうね。
そもそも趣味が続けられかはお金や健康次第であって、保証されているわけではありません。
そんな時、新しい楽しみを見つけられる能力が必要なのだと思います。
「自分一人で時間を潰すことができる能力を『教養』と呼ぶのである。」という中島らもの言葉を紹介したことがありますが、まさにこの「教養」が必要です。
新型コロナの自粛生活をそれなりに楽しめる能力であり、リタイア後の生活を楽しめる能力でもあります。
むしろ、「何もしない」時間を楽しめるくらいの方が早期リタイア・セミリタイア向きだと思います。